「豊川海軍工廠挽歌」

高校同窓生に紹介された本です。

著者はやはり同窓生の母君小野田徳枝さん。

豊川海軍工廠(こうしょう)は戦争当時、東洋一と言われた大兵器工場でした。

豊川稲荷で有名な愛知県豊川市にありました。

なんと6万人もの人々が働いていたそうです。

昭和20年8月7日、米軍機による空襲で工廠は壊滅。

一日で2500人もの犠牲者を出す大惨事となりました。

17歳のトクエさんは女子挺身隊としてここで働いていました。

惨劇を生き残った彼女は八十歳を超えてから手記を発表しました。

前後の出来事をまるで昨日のように詳細に書き述べています。

恐怖、悲しみ、怒りなどの激情は、70年という歳月のためでしょうか、昇華され透明となった感情だけが冷静に書き残されているように感じます。

本著は戦没者への挽歌であり、ご自身の青春への追憶でもあるように思えます。

「そこには国のためにと精魂込めて働いた女子挺身隊員としての私の青春があった。

『さようなら』私は万感の思いを込めて豊川海軍工廠に別れを告げた。」

書き手の高い知性と人柄が透けて見えるようです。

名著です。